民泊サービスを行う方法としては3つの方法があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、民泊サービスを行う目的や施設の状況等から最適な方法を選択できるよう、各方法の特徴を整理します。
■空き家を「旅館レベル」にすることは難しい
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民泊サービスを行う方法には、旅館業法に基づく方法、特区民泊における特定認定を取得する方法、住宅宿泊事業法に基づく方法の3つがあります。
①旅館業法による旅館業の許可を取得する方法
旅館業法に基づき、簡易宿所営業などの許可申請を行い、許可を取得する方法です。メリットとしては、民泊サービスのように営業日数や宿泊日数に制限がないため、長期間にわたり、反復継続して宿泊料を受けつつ、人を宿泊させることが可能です。しかし、旅館業法上の営業許可を受けるためには、用途地域の制限のほか、衛生設備や消防設備の設置が義務付けられ、保健所の許可が必要であることや、建物の設備等を建築基準法に適合させる必要があるなど、厳しい設備・構造要件が課されることとなります。今ある空き家を利用しようとする場合、増改築などに伴うコストも高額となり、手続きも煩雑です。よって、旅館業法に基づく方法はお勧めできません。
②特区民泊における特定認定を取得する方法
特区民泊とは、国家戦略特区として指定された地域であって、かつ、特区民泊に関する条件を制定した地域で行うことができる民泊サービスです。このような地域では、旅館業法の特例として、旅館業法による営業許可を取得することなく、申請により事業開始のための認定を受ければ、合法的に民泊サービスを行うことが可能となります。旅館業法の許可を取得することなく、民泊サービスを開始できることが大きなメリットですが、旅館業法による営業許可の場合と同様、用地地域の制限があるほか、そもそも国家戦略特区として指定され、かつ条例を制定した地域に限って認められる方法なので、民泊を行いたい空き家が当該地域内にない場合は、この方法を採ることができません。また、最低宿泊日数は2泊3日以上、地域によっては6泊7日以上という制限があり、1泊だけの宿泊をさせることができません。また、居室面積や設備要件も緩やかなものではないので、事業開始のための認定も容易ではないことを考えると、やはりこの方法もお勧めできません。
③住宅宿泊事業法に基づく方法
結論として、空き家を利用した民泊を行うには、住宅宿泊事業法に基づく方法がよいでしょう。日本での民泊サービスを活性化させるために制定されたのが、住宅宿泊事業法であり、これは、その名のとおり「住宅」を利用した民泊サービスを認めるものです。よって、旅館業法や特区民泊では認められなかった、住宅専用地域での民泊営業が可能となる点が大きなメリットです。設備要件等も、上述の2つの方法よりも大幅に緩和されているため、民泊サービスは行いやすくなっています。ただし、1年間の営業日数が180日を超えることができないため、1年の半分くらいしか民泊として稼働させることができません。180日以上の期間にわたって民泊サービスを行いたい場合は、他の2つの方法を検討せざるを得なくなることに注意が必要です。
◎住居専用地域とは?
住居専用地域は、人が住むことを優先的に考え、店舗の設置等について制限がかけられている地域です。住居専用地域の中にもいくつかの種類がありますが、そのうちのいくつかの地域で、原則として、旅館やホテルは建築できません。
▼民泊を行う3つの方法の比較