遺産相続手続きの流れ



 

遺産相続手続きは、何を行えばよい?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

多くの人にとって、遺産の相続手続きを行う経験はごく少ないものでしょう。そうした不慣れな手続きを、身内や親しい人が亡くなった後、心の整理もつかない状態で行わなければならないのは大変なことです。しかし、手続きのなかには期限が決まっているものもあるため、放っておくわけにはいきません。被相続人が亡くなってから残された人が行うべき手続きのなかで、期限が決まっているものは主に以下の通りになります。

 

 

上記以外にも銀行、保険会社への連絡やクレジットカードの解約など速やかに行わなければいけない手続きは数多くあります。実際にこれらの手続きを行う際は、弁護士や税理士など専門家のサポートを受けることがおすすめですが、まず自分でも概要を知っておくと安心ですよ。そこで今回は、手続きのなかでも複雑な遺産の相続に焦点を当てて、手続きの流れや必要な書類などについて、ポイントを分かりやすく解説します。

 

 

遺産の相続手続きの流れ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

相続は被相続人が死亡したことによって起こるため、死亡診断書または死亡検案書に書かれている死亡日が相続開始日となります。上記の表でご紹介した通り、被相続人が死亡すると、死亡日から7日以内に死亡届の提出や、14日以内に公的年金や国民健康保険、介護保険の手続きなどを行わなければいけません。また、遺産相続の観点でいうと、相続発生から3か月以内には遺産をどのような形で受け取るのか、または受け取らないかの選択をし、10か月以内に相続税の申告をする必要があります。これらの期限を頭に入れておきながら、どのように遺産相続の手続きを進めるのか見ていきましょう。

 

1、遺言書の有無の確認

相続が発生したら、まず確認したいのが遺言書の有無です。法的に有効な遺言書があれば、相続はそれに従って行わなければならないためです。遺言書が、公証役場で公証人に作成してもらった「公正証書遺言」であれば、公証役場の「遺言検索システム」に登録情報が出てきます。心当たりがあれば、まずはこちらを利用してみましょう。

 

しかし、遺言書が自筆で書かれた「自筆証書遺言」だった場合、故人(被相続人)が何も手がかりを残していなければ家の中をくまなく探す必要があります。もし見つかったらすぐに開封せず、まず家庭裁判所に提出して「検認(遺言書の存在と形式を確認してもらうこと)」を行ってください。または、故人が遺言書を法務局に預けていないか問い合わせることもできます。実際に預けたかどうかが分からない場合は「遺言書保管事実証明書」の交付を申し込み、保管の有無を確認します。故人が預けたことが分かっている場合は「遺言書情報証明書」の交付を申し込めば、内容を確認することが可能です。

 

2、相続人の調査・確定

遺言書がなかった場合は、相続人同士で遺産の分割方法を相談しなければなりません。そのため、誰が相続人で、誰が相続人ではないのかを調査・確定します。相続人を確定するには、以下のそれぞれの戸籍謄本が必要です。

 

・故人の出生から死亡まで

・相続人全員

・故人に子がいない場合は、故人の両親の出生から死亡まで

 

3、相続財産の調査

相続人の確定と同時に行っておきたいのが、相続財産の調査です。金融機関の通帳、保険会社や証券会社からの郵便物、不動産や自動車の名義といった手がかりから確認を進めていきます。

 

4、単純承認・相続放棄・限定承認の選択

相続人となった人は、遺産の相続について「単純承認」「相続放棄」「限定承認」のいずれかを選択する必要があります。それぞれは、以下の内容を意味する言葉です。

 

単純承認

被相続人が所有していた財産を、マイナスの財産(借金)も含め全て引き継ぐ

 

相続放棄

相続人の資格を放棄し、一切の財産を引き継がない

 

限定承認

プラスの相続財産の範囲内でマイナスの相続財産も引き継ぐ

 

相続放棄と限定承認は、相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う決まりになっています。3か月以内に相続放棄も限定承認もしなかった場合、単純承認したものと見なされるので注意が必要です。限定承認は、相続放棄した人を除いた相続人全員で共同して行わなければなりません。

 

5、遺産分割協議(遺言書がない場合)

遺言書がなかった場合、相続人は全員で相続財産の分け方について協議します。協議を成立させるには相続人全員の合意が必要なので、反対する人、非協力的な人などが1人でもいると、時間がかかってしまうこともあります。遺産分割協議が終了すると、遺産分割協議で決まった内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめ、相続人全員が署名と押印をします。不動産の相続登記、預貯金や株式などの名義変更の際には、この協議書が必要です。また、遺産分割協議書は、一旦決まった協議内容についてトラブルが起こることを防ぐのにも役立ちます。

 

6、相続税の申告・納付

相続財産が基礎控除額を超える場合、相続税の申告と納付が必要です。申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行わなければなりません。また、それまでに遺産分割協議が決まっていない場合も、未分割の状態で一旦申告を行う必要があります。

 

7、不動産の相続登記

故人が不動産を所有していた場合は、相続登記(不動産の所有権を移転する手続き)が必要です。相続登記は、その不動産がある土地を管轄している法務局で行います。

 

 

相続の対象となる財産は?
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

上で述べた通り、相続が発生したら遺産の内容を把握しなければなりません。相続の対象となるのは、故人が生前に所有していた財産の全てです。これには、借金や債務などマイナスの財産も含まれます。それぞれの内訳について、詳しく見ていきましょう。

 

▼プラスの財産

金銭的な価値を持つ、プラスの財産には次のようなものがあります。

 

▼マイナスの財産

マイナスの財産には、次のようなものがあります。これらを相続した相続人は、故人に代わって返済しなければなりません。なお、債権者に対する責任は、遺産分割協議にかかわらず、法定相続分によって分割して負うことになります。

 

▼相続の対象にならない財産

故人の財産であっても、本人にだけ認められた国家資格や技能は、相続の対象になりません。生命保険金や死亡退職金は相続の対象ではありません。ただし、相続税の計算においては「みなし相続財産(故人が生前所有していた財産ではないが、亡くなったことによって財産となったもの)」として、相続税の対象になります。みなし相続財産は、相続財産ではないので、相続放棄をしても受け取ることができることに注意が必要です。

 

 

遺産の相続手続きに必要な書類
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

実際に遺産の相続手続きを行う際には、多くの書類が必要になります。書類に不備があると手続きが進められない場合もあるので、手続きの流れとともに必要書類も把握しておきましょう。

 

▼必要書類

遺産の相続手続きで必ず準備しなければならない書類は、次の通りです。

 

故人の戸籍謄本、住民票の除票

故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(戸籍事項全部証明書、除籍謄本、改製原戸籍)と、故人が最後に住んでいた土地の住民票(亡くなっているので除票)です。

 

相続人の戸籍謄本、住民票

故人との関係を示す資料として、相続人全員の戸籍謄本が必要です。相続を放棄している相続人の分も、戸籍謄本と住民票を用意する必要があります。

 

相続人のマイナンバーカード(通知カード)

相続税申告の際に必要です。マイナンバーカードがない場合は通知カードと運転免許証やパスポート、通知カードもない場合はマイナンバー記載の住民票と運転免許証やパスポートを提出します。

 

相続人の本人確認書類

相続登記の際に本人確認するほか、相続税申告でマイナンバーカードがない場合に必要です。運転免許証やパスポート、各種福祉手帳などがここに含まれます。

 

▼場合によって必要な書類

遺産の相続手続きで、当てはまる場合のみ必要な書類は次の通りです。

 

遺産分割協議書

故人の遺言書がなく、相続人全員で遺産分割協議を行った場合、その結果を書面にまとめたものです。相続を放棄している人の分も含めた、相続人全員の署名と押印が必要です。

 

相続人の印鑑証明書

遺産分割協議書に押印する、相続人全員の印鑑証明書です。

 

相続関係説明図

故人と相続人の関係を図で示したものです。相続人の人数が多く関係が複雑な場合に作成するほか、相続登記の際に登記申請書にこれを添付すると、戸籍謄本の原本を返却してもらえます。

 

金融機関の書類

故人の預金を相続人の口座へ移す際に必要です。払戻請求書、振込用紙、相続人の通帳などがここに含まれます。手続きの際には、これらのほかに「必要書類」として挙げた戸籍謄本や印鑑証明書などを使用します。

 

不動産に関する書類

故人が不動産を所有していた場合は、登記事項証明書(土地や建物の面積、抵当権設定などの情報が記載されたもの)、固定資産評価証明書(不動産の評価額が記載されたもの)などが必要です。その不動産を貸していた場合は、賃貸借契約書も必要となります。

 

有価証券に関する書類

故人が株式や投資信託を所有していた場合は、残高証明書や取引残高報告書が必要です。

 

生命保険に関する書類

故人が生命保険に加入していた場合、保険金請求をするには、生命保険会社から送られてくる保険金請求書、受取人の戸籍謄本や印鑑証明書が必要です。相続税申告には、生命保険支払通知書、生命保険証書、火災保険などの保険証書、解約返戻金が分かる資料が必要です。

 

債務に関する書類

故人に債務(借金)があった場合、相続税申告の際には、借入金残高証明書、返済予定表などが必要です。

 

これらの書類のうち、原本が必要なのは遺産分割協議書、戸籍謄本(除籍謄本や改製原戸籍なども含む)、印鑑証明書で、ほかはコピーでの提出が認められています。書類を集めるのには時間がかかるため、忙しい人は専門家に依頼することも検討するとよいでしょう。

 

 

手続きをしない場合のリスク
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

相続が発生しても「忙しくて時間がない」「親族間のトラブルが起きている」などの理由で、遺産の相続手続きがつい後回しになってしまうこともあるかもしれません。しかし、手続きを放置すると、次のような問題に発展するリスクがあります。

 

▼相続放棄、限定承認ができなくなる

上に述べたように、相続開始を知ってから3か月以内に手続きをしないと、相続放棄と限定承認はできなくなります。その場合、望まない借金を負ってしまうことがあるので注意が必要です。

 

▼次の相続が起きるとさらに煩雑になる

不動産の相続登記を行わないうちに、次の所有者が死亡した場合、不動産はさらに次の所有者へと引き継がれます。しかし不動産の名義は前の前の代の人のままなので、相続関係が複雑になってしまいます。相続人が多数になると、行方不明の人、判断能力のなくなった人、未成年者などが入ってきたり、遠方に住んでいる相続人が入ってきたりと、協議がスムーズにいかなくなる恐れもあるでしょう。

 

▼法律違反となる恐れがある

法改正によって、相続登記は2024年をめどに義務化される見込みとなっています。そのため、今後不動産の相続登記を放置すると、過料の罰則を課せられる場合があります。

 

▼払戻請求権が失われる

預金者が亡くなった場合、その口座の預金は払い戻してもらうことができます。しかし、口座には消滅時効があり、銀行では5年、信用金庫や労働金庫では10年にわたって口座の取引がなかった場合、休眠口座とされて払戻請求権が失われてしまう場合があります。

 

▼株式の権利が失われる

株式の相続手続きを行わないまま5年放置すると、株式発行会社に売却や買い取りをされる恐れがあります。その場合は売却金を受け取る権利がありますが、名義変更をしていないと会社から連絡が届かないため、気付かず請求できないままとなってしまうかもしれません。

 

▼相続税の滞納が起こる

ここまででもお伝えした通り、相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と期限が定められています。期限をすぎると、延滞税や不申告加算税などが課せられる場合があるので注意しましょう。

 

▼相続回復請求権・遺留分侵害額請求権がなくなる

相続回復請求権とは、相続人が相続の権利を侵害されたときに回復請求する権利のことです。また、遺留分侵害額請求権とは、遺留分(法定相続人に認められている遺産の最低限の取り分)を侵害された際に遺留分に相当する金額を請求できる権利のことです。

 

これらにはそれぞれ時効があるため、早めに対応しないと受け取れるはずの遺産を失ってしまう場合があります。

 

 

専門家に相談すると安心でスピーディー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ここまで見てきたように、遺産の相続手続きには多くの手間や時間がかかります。なかには専門知識が必要な部分もあり、初めての状態で戸惑わずに進めるのは難しいことです。そのため、実際に手続きを行う際には、専門家に相談してみるとよいでしょう。

 

遺産の相続手続きの専門家には、弁護士、税理士、司法書士、行政書士などがいるほか、銀行や生命保険会社で専用相談窓口を設けている場合もあります。それぞれ対応できる分野は異なるため、相談する前には下の一覧表を参考に、相談先を検討しましょう。費用(報酬)も含めて適切な相談先を選ぶことで、手続きを安心して済ませ、日常の暮らしに早く戻ることができますよ。