マンションの防災対策とは?



 

今どきのマンションは、構造や設備などのハード面のほか、コミュニティづくりなどソフト面の防災力も強化している。もしもの時に備え、マンションの防災対策を見てみよう!

 

【構造・住戸の中・共用部の3つが大事なポイント】

1、構造

地震の多い日本では、建物の構造や地盤対策など「耐久性」にかかわるポイントは誰もが気になるところ。そもそもマンションではどんな地震対策がとられているのか知っておこう。

 

2、住戸の中

もし、家の中にいるときに地震などの災害が発生したら…。家の中で身を守り、必要に応じてすばやく非難するために、住戸内にはどんな工夫があるか見てみよう。

 

3、共用部

一戸建てにはないマンションの強みといえば共用部の充実。居住者でシェアできる防災用設備や備品、マンション居住者や地域住民との交流など、ソフト面の災害対策もある。

 

 

■1、マンションの構造って地震に強い?
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▼震度6強~7程度の地震でも倒壊せずに人命が守られる

現行の建築基準法にのっとって建てられたマンションは、柱や梁でガッチリとつくられた「耐震構造」が基本。震度5弱程度ではほぼ損傷がなく、震度6強から7程度でも倒壊しない強さで建てられている。さらに最近はタワーマンションなどで、これらの耐震構造に加え、地震の揺れを建物に伝えにくくする免震構造や、建物の内部に設置した装置で揺れを軽減する制震構造を採用するケースが増えている。

 

【地震に強いマンションの構造】

 

●耐震構造

柱や梁などの構造自体を頑丈につくることで地震の揺れに耐える構造。ほとんどのマンションは基本耐震構造。

 

●制震構造

建物内に組み込んだダンパーなどで建物の揺れを軽減する。高層マンションの風揺れ対策にも有効。

 

●免震構造

地震の力を吸収する免振装置(積層ゴムなど)を基礎部分に入れ、建物に地震の揺れを伝えにくくする。

 

 

【耐震等級の基準】

耐震性を知るには、住宅性能表示制度の耐震等級を目安にすると分かりやすい。最高は等級3で、建築基準法を満たす等級1の1.5倍の強さ。等級2や等級3にするには、柱や梁を大きくするなど、コストアップや居住性に影響が出る場合もある。そのためマンションでは、等級2以上の物件はごく一部に限られる。また、免震構造の等級は評価対象外となっている。

 

 

▼地盤の固さと深さに合わせた基礎で建物を支える

マンションを建設するときは事前に地盤調査をし、その地盤特性に合わせて、建物を支える基礎の構造が決められる。固い地盤が地表の比較的近い部分にあれば、直接基礎といって、基礎を直にのせる方法が採用される。地表近くの地盤が弱い場合は、地中深くにある固い支持層まで杭を打ったり、地盤をセメント系材料で固める改良工事などが行われる場合もある。

 

 

 

【旧耐震基準と新耐震基準の違い】

1981年6月の建築基準法改正を境に、それより前の耐震基準を「旧耐震」、それ以降を「新耐震」と呼ぶ。旧基準では「震度5程度の地震に耐え得る住宅」としていた規定を、新基準では「震度6強以上の地震で倒れない住宅」に。建物の倒壊を防ぐことで、建物内の人間の安全を確保することに主眼が置かれた。

 

 

 

■2、住戸にはどんな災害対策がされている?
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▼家具の転倒などを防ぎ、安全に避難できる経路を確保

例えば、耐震枠を採用した玄関ドアや、耐震ラッチなど、室内にも地震でケガをしたり、閉じ込められたりすることがないような対策や設備が整っている。インターホンには地震の初期微動を捉え、揺れが来る前に音声で知らせてくれる緊急地震速報システムが連動している場合も。強い揺れを感じるまでの間に、ガスに火を止めたり、ドアを開けて避難経路を確保するなどの行動がとりやすい。

 

「避難ハッチ」

火災などが発生し、玄関から避難できないときは、バルコニーに数戸おきに設置された避難ハシゴで下の階に逃げる。戸境にある蹴破り戸を破って最寄りの避難ハッチを利用する場合も。

 

「耐震ラッチ」

地震の揺れで扉が開き、中の物が飛び出さないようにする装置。一定の大きさの揺れを感じると、扉にストッパーがかかり、ロックされる。キッチンの吊り戸棚などに設置されることが多い。

 

「家具の転倒防止対策」

家具を固定する金具を取り付ける下地をあらかじめ壁内部に設置する物件も。また、ウォークインクローゼットなどがある場合は居室にタンスを置く必要がなく、家具の転倒事故を防げる。

 

「耐震枠の玄関ドア」

地震の揺れでドアが開かなくなるといったことを防ぐ対策。ドアと周りの枠の間に十分な隙間を設け、蝶番にスプリングを内蔵するなどして、ドア枠が変形した際の閉じ込めリスクを予防する。

 

「緊急地震速報」

インターホンと連動した緊急地震速報システムを導入する物件も。ほんの数秒前でも地震の揺れが来ることを事前に察知できれば、机の下にもぐる、火を消すなど身を守るための対策がとりやすい。

 

●全戸に防災袋を備えるマンションも

災害に備えて家庭で準備しておきたいのが防災グッズ。最近はヘッドライトに懐中電灯、携帯ラジオ、簡易トイレなど、非常時に役立つ防災用品をひとまとめにして全住戸に配布するマンションもある。個別に準備する手間が省け、入居当日から用意されているので安心。

 

 

■3、共用部にはどんな災害対策があるの?
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▼備蓄品や非常用電源を確保し、避難生活にも対応

大きな災害が起きたときマンションの敷地や共用施設は居住者のための避難場所になる。そのため。マンションでは地震発生後の火災やエレベーターへの閉じ込めなど、二次災害を防ぐ対策も強化。非常用発電機などを備え、ライフラインが維持できるような対策をとっている。被災後マンション内で数日間避難生活をすることを想定し、3日分程度の食料や飲料水、救急用品などを備蓄するケースもある。

 

「防災扉」

マンションは壁や床などが耐火構造のため、火災が起きても延焼しにくい。また、共用廊下に火や煙が広がるのを最小限に食い止めるために、避難経路や避難階段には防火扉が設置されている。

 

「自動着床装置付きエレベーター」

地震の初期微動(P波)を感知し、大きな揺れ(S波)が来る前に、エレベーターを最寄階に止め、乗客を避難させる。停電時は非常用電源で避難階にエレベーターを呼び戻すため、閉じ込められる心配が少ない。

 

「自家発電システム・蓄電池」

非常用発電機や大容量の蓄電池を導入するケースも。停電時も消防活動に使う非常用エレベーターが稼働できるほか、共用廊下の照明の一部点灯や、セキュリティシステムの稼働が可能なケースもある。

 

「防災備蓄倉庫」

水や食料などの備蓄品や避難や救出に使う資材・工具類を、共用部に保管するマンションが増えている。1か所の倉庫にまとめるケースもあれば、各階、または数階おきに分けて保管するマンションもある。

 

「やわらかい配管」

大地震で地盤面がずれると、地中の給水管などが壊れる可能性も。そこで、最近は公共の上下水道とマンションの給水管の繋ぎ目にずれても壊れにくい柔軟な素材を使うなどの工夫をする物件もある。

 

●非常時に助け合えるコミュニティ形成を支援

被害を最小限にくい止めるには、日ごろの訓練と居住者同士が互いに助け合えるコミュニティ形成が重要だ。そのため最近は、管理組合で防災マニュアルを作成したり、炊き出しなどの防災訓練をすることも。災害時に協力関係が築きやすいよう、日ごろから居住者交流イベントに積極的なマンションも増えている。