「貸す」とは言っても、賃貸借契約には大きく2つの種類があります。貸主になることを想定した場合、どちらかが有利かと言えば一長一短です。2つの賃貸借契約の内容を確認しておきましょう。
■空き家を使いたいときに使えないかも(普通借家契約)
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空き家となっている家を貸し出す際は、借主(賃借人)との間で建物賃貸借契約(借家契約)という契約を締結することになります。そして、この借家契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」という、大きく2種類の借家契約があることは知っておきましょう。
「普通」借家契約とは、一般的な借家契約ですが、契約期間が1年以上でなければならず(一般的には2年契約)、契約の更新ができる契約方法です。また、契約をした後は「もう更新はやめましょう…」と解約手続がされるまで、同条件で更新され続けていく借家契約です。そして、借主が借り続けることを希望している場合、原則として、貸主から中途解約をしたり、契約期間が満了した際の更新の拒絶ができません。絶対にできないわけではありませんが、貸主が「もう貸すのはやめたい」と思ったとしても、契約違反があるなどの「正当事由」が必要となります。つまり、貸主の事情のみを考えると、今までは空き家を他人に貸していたけれども、自分で使いたくなったという場合でも、自由に自分で使えなくなる契約とも言えます。借主の権利が強いタイプの契約が「普通」借家契約です。よって入居者は安心して、長く住み続けることができます。
なお、中途解約に関する特約(特別な契約)をしておけば、「借主」の側からは中途解約はできます。「普通」借家契約を締結している場合、大家さんの都合で、簡単には借家を取り戻すことができません。使いたいときに空き家を使うことができない…ということは、例えば、賃貸借契約の途中で「売却」のチャンスが発生した場合、そのチャンスを逸し、売りづらい物件となるリスクもあります。また、大家さんの都合で空き家を明け渡してほしいときは、正当事由を認めてもらうためにも、借主に立ち退き料を支払うといった金銭による保証を行うことが一般的です。
■その期間こっきりの契約!(定期借家契約)
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他方、「定期」借家契約は、契約を締結する時に、賃借権の存続期間(借家期間)を定めておく賃貸借契約です。契約した期間が満了すると、貸主と借主の双方の合意がない限り、契約期間の延長は認められず、入居者は退去しなければなりません。定期借家契約は、公正証書などの書面又は電磁的記録(データ)によって契約をします。また、建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面等を交付して説明しなければなりません。少し細かいルールを設定したうえで、一定の期間が満了すると大家さんに貸家が確実に戻る制度となっています。「定期」借家契約は、一定期間で退去しなければならないため、借り手がつかない可能性が高まります。よって、普通借家契約を締結するほうが一般的です。
以上を踏まえると、空き家を貸す場合、「普通」と「定期」のどちらが有利ということもありません。とはいえ、5年後には空き家を自ら使いたい、もしくは売却したいと考えている場合などでは、「定期」借家契約にすべきでしょう。その反面、借主は一定期間で立ち退くことになるので、それでもよいという借主とのマッチングが必要となります。
▼普通借家契約と定期借家契約の比較
①用途の制限
借りた空き家の使い方に制限があるかという話です。どちらの借家契約においても制限はないので、自宅用(居住用)として使っても、事業用つまり会社として使ってもらっても問題はありません。
②契約方法
普通借家契約においては、契約書を用いた契約を行わなくとも法律上は有効に成立させることができます。とはいえ、後のトラブルを避けるためにも書面で契約を結んでおくのが一般的ですし、そうするべきでしょう。また、定期借家契約においては、書面を用いて契約を行わないと有効に成立したと認められませんし、契約書とは別に「更新がないよ!」「期間満了で終了するよ!」という書面を交付しなければなりません。後のトラブルを避けるために、しっかりと当事者間で更新がない旨を確認しておく必要があるんですね。
③の更新の有無
定期借家契約では、基本的には更新できません。借主が引き続き、同じ物件を使用したい、賃借したいという場合は、再度契約を結びなおす必要があります。
空き家を「貸す」という選択をする場合でも、多くの人は専門業者に委託する方法を選択する人は多いと思います。ただそうであったとしても、ここで紹介した話を知っておくと、専門業者と話を進めるうえで役に立つと思います。一定期間のみ貸したいという場合は、定期借家契約をした場合のメリット・デメリットについて具体的に相談してみましょう。