「貸す」という選択を考える場合、「マイホーム借上げ制度」の利用も検討してみましょう。一定の条件を満たす場合、空き家リスクを避けつつ、賃料収入を得ることができるかもしれません。
■賃貸経営にかかわらずにすむ「マイホーム借上げ制度」
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賃貸経営をしていく上で「空室リスク」と「賃借トラブル」は必ずと言っていいほど起こりうるリスクです。しかし、空室リスクを避けたい人や、入居者とトラブルになった時に自分で対応して解決する自信がない…という人は多いはずです。これらのリスクを回避するためには「マイホーム借上げ制度」の利用を検討してみるのがよいかもしれません。「マイホーム借上げ制度」とは、一般社団法人移住・住みかえ支援機構(略称:JTI)が提供するサービスです。JTIが空き家となっている実家を借り上げて、JTI協賛会社による入居者募集によって最初の入居者が決定すると、それ以降は、入居者がいなくても契約期間中はJTIより家賃が支払われます。「借上げ」ということは、法律上は、空き家の所有者はJTIに賃貸し、JTIが実際の入居者に又貸しをする関係になります。これを転貸借契約といいます。
転貸借契約が行われることで、賃貸人と転借人が直接にかかわることがありません。また、家賃の未払いであったり、退去時の残置物などについての入居者とのトラブルは、間に立っているJTIが対応することになります。JTIは非営利の団体で、転貸賃料と支払賃料との差額から生まれる収益等によって運営されていますし、万が一の場合は、国土交通省が管轄している一般社団法人高齢者住宅財団の基金を使用できることになっています。
■マイホーム借上げ制度の利用の手順について
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「マイホーム借上げ制度」を利用するには、いくつかの条件と申込みの手順があります。それらの概要を確認していきましょう。
▼利用条件について
①空き家の所有者が50歳以上であること
②日本国内にある住宅であること
なお、一戸建てはもちろん、マンションもこの制度の対象となります。
③建築後25年以上経過している物件については、建物診断を受け、必要に応じて耐震工事を実施すること
建築診断も、耐震工事も空き家所有者の自己負担となります。費用がどれくらいかかるかは確認しておきましょう。
④建物が事業用物件でないこと
一部分が店舗や事務所であるようなケース、また、相続した物件が賃貸アパートといったケースでは、この制度を利用することができません。
⑤火災保険に加入をすること
長く空き家となっている場合、火災保険に入っていない可能性もありますが、この制度を利用するためには、住宅に火災保険を掛ける必要があります。もちろん費用は、空き家所有者の自己負担です。
▼申込みの手順について
①カウンセリングカードに必要事項を記入して、JTI宛てに郵送します。
②JTIの担当者より、制度の詳細な説明を受けます。
③JTIの協賛事業者が空き家を査定して、賃料を算出します。
④制度利用申込書を提出し、申込手数料(税込み金18,700円)を支払います。
⑤「耐震診断」及び「劣化診断」を自己負担で受けて、借上げ基準を満たしていることを確認します。建物診断の結果、必要な場合は、自費で工事をします。
⑥JTIの協賛事業者が入居者を募集します。
⑦JTIより、承認通知書を受領して、契約が成立します。
⑧入居者が入居した日から、借上賃料が支払われます。
以上が「マイホーム借上げ制度」について、最低限知っておきたい利用条件と申込み手順の概要です。空き家リスクを減らすことができ、また、借主のトラブル処理にも直接的にかかわらないで済む…という点は大きなメリットです。この制度の利用を検討したい場合、詳細な情報は、下記JTIのサイトを確認してください。
なお、「マイホーム借上げ制度」には、「最低家賃保証型」(入居者がいない期間も家賃収入あり)と、「おまかせ借上げ型」(耐震工事などJTIが代行)という2つのタイプがあります。